Pocket
LINEで送る

ハローみなさん、海外観光客向け動画チャンネル「ジャパネスクエスト」のYusukeです。9月3日に、日本のAirbnbホストを中心に行われた「夕張創生イベント」。自分も京都から参加してきました。

イベントの感想は↓のようにみなさんそれぞれ書いているので、自分は真面目に「観光」の視点から夕張の現状・課題・可能性を考えてみます。

夕張の面白さと可能性を充分に感じたし、それをたくさんの人に知ってほしい|エアログ

自分でしか生み出せない歴史をつくる面白さ|とみやすブログ


1.夕張市の現状

まずは夕張の歴史と現状を整理してみましょう。

  • 1874年 地質学士ベンジャミン・S・ライマンが夕張川流域に石炭鉱脈の存在を予測。
  • 1888年 調査で鉱脈を発見。その後入植者を募集し、多数の炭鉱が拓かれ、国内有数の産炭地となる。
  • 1960年 関連産業も発達し116,908人の人口を抱える都市に。しかし一方で昭和30年(1955年)代後半から石油へのエネルギー革命が進行。海外炭との競争や相次ぐ事故、国の石炭政策の後退に直面する。
  • 1973年 大夕張鉱業所が閉鎖される。
  • 1981年 北海道炭礦汽船(北炭)夕張新鉱でガス突出事故が発生、石炭産業の衰退に拍車がかかる。
  • 1990年 最後まで残っていた三菱石炭鉱業南大夕張炭鉱が閉山。この辺りから市は「炭鉱から観光へ」と方針を変えるが振るわず。閉山後のインフラの引き受け、人口減による税収減、高齢化による社会保障費の増大なども伴って、市の財政が圧迫されていく。
  • 2007年 深刻な財政難から事実上の財政破綻となる。

要するに石炭炭鉱で賑わっていた街が、石油へのエネルギー転換という時代の流れに乗れず貧窮。観光に転換を試みるも失敗、財政破綻へといった感じです。

現在は総人口9,000人弱、そのうち45%が高齢者。人口減少率は全国6位。小学校・中学校はそれぞれ1校のみ。経常収支比率は日本の自治体でワースト1。

……シムシティだったらコントローラーぶん投げるレベルです。


2.夕張が観光都市になるための課題

次に、夕張を訪れて感じた課題を挙げます。先に書いておきますが弱みが強みになるように、課題というのはうまく使えば長所になる可能性を秘めています。下記に挙げるのは、少なくとも現状は弱みのままであるポイントです。

・観光という忌み言葉

かつで観光政策で大失敗した夕張。一部では「観光」という言葉は忌み言葉になっているとのこと。「観光で活性化したい」と言うと「なんでまた以前失敗した観光なの」というのが、昔からの住民の感想のようです。

・観光資源がない

これは後述で可能性を述べますが、少なくとも現状では旅行者を数日滞在させるような観光資源はあまりありません。強いて挙げれば冬のスキーですが、これはこれで修学旅行生を受け入れるともう宿泊キャパシティがなくなる様子。

・市の力が強い

廃墟遊園地を含め、現在多くの施設は市の所有。決して夕張の行政を批判するつもりはなく、むしろ職員の皆さんは夕張のことを考えて奮闘している印象でしたが、それでもやはり官だけではチャレンジ精神が弱くなるのも事実。また既存の視点に囚われないアイデアも民からの方が出やすいです。

余談ですが「住む家を探すときは不動産屋ではなく、市に相談しに行く」という言葉がとても印象的でした。

・地元の高齢者が裕福

意外なことに、夕張に昔から住む高齢者は年金や手当などで裕福な方が多いと聞きました。これもまたチャレンジ精神と相反することが多いポイント。


3.夕張市の可能性

課題がある一方でポテンシャルも感じました。具体的には――

・活性化を応援するマインド

良い意味で印象的だった言葉が、「夕張では、町を活性化しようとするイベント・動きにはNoと言えない」というもの。新しいことに挑戦するうえで大切な風潮です。色々なイベントも企画しやすいでしょう。

一方でイベントは局所的な需要しか生まないため、年間を通して集客するにはやはり観光資源が不可欠になってきます。

・市外から面白い人が集まってきている

とみやすブログの富安さんやギークハウス@夕張、一般社団法人らぷらすの安斎さんや清水沢プロジェクトの佐藤さんなど、面白い人が外から入ってきている印象です。彼らに夕張の魅力を聞くと、口をそろえて言うのが「なんでもできる自由さがある」。この言葉は掘り下げていくとヒントになる気がします。

・形にとらわれない観光資源

視点を変えれば観光コンテンツになり得る資源もありました。

例えば点在する廃墟。こういう非現実的空間は写真家にとって魅力的です。 実際、東亜建材工業株式会社が所有する旧発電所ではミュージックビデオの撮影も行われたとのこと。

廃墟遊園地も撮影やイベントにうってつけですし、廃校になった校舎も懐かしさを感じるノスタルジックな場所でした。これらをスペースマーケットで貸せたら面白いと思います。

後述の2つは市の所有なので安全面で及び腰になると思いますが、そこは「やっちゃえ精神」で頑張って欲しいです。「事故に合っても文句言わない」という誓約書を書かせればOKな気もしますし、むしろそんな誓約書こそ財政破綻都市らしい気が。

・財政破綻というコンテンツ

財政破綻した町というストーリーは人を惹きつける何かがあります。創意工夫すれば魅力的なコンテンツになり得ると感じました。

いかにして町は財政破綻するのか、そして破綻するとどうなるのか――そういった学びにつながる見せ方は興味を呼ぶのでは。聞くところには過去にそういうバスツアーがあったらしいんですが、そういう「説明」だけの提示は飽きてしまうので、財政破綻プロセスを「学び、体験できる」と良い気がします。

例えば夕張版シムシティみたいなボードゲームをつくって、どうプレイしても破綻するとか(半分ネタです)。

・スキー×Airbnb

冬にだけ増えるスキー需要。こういう局所的な需要こそ、Airbnbが活きる場です。ホテルを作ったら年間を通して収支を考えなければいけませんが、自宅の空きスペースを繁忙期だけ貸すならコストほぼゼロですからね。

ただスキー用具をどう備えるかは課題が残ります。


4.考察

最後におこがましいのは承知のうえで、Target Audience(顧客ターゲット層)とValue Proposition(提供する価値)の観点から自分の意見をまとめてみます。

まず狙うべきターゲット層は外国人よりも日本人。理由は2つ――外国人旅行者は情報整備と受け入れ体制の拡充にコストがかかる点と、「財政破綻」というストーリーが知れ渡っていてバリューも感じるのは日本人である点。

さらにターゲットを絞っていくと、まずは上でも挙げた写真家や映像制作者。廃墟での撮影は魅力的なコンテンツですし、季節ごとに景色が変わるのもリピーター獲得のポイントとなります。何より彼らの良いところは、滞在時間と日数が長いこと。自分の撮影の経験から語りますが、1つの場所で一日ずっとシャッターを切っていることもしょっちゅうですし、天候待ちで1つの町に3~4日滞在することもよくあります。そして撮った写真をSNSに公開して勝手にPRしてくれるのも嬉しいですね。

また前述のように廃墟や廃校をスペースマーケットで貸し出せば、本格的な撮影・イベント需要もある気がします。廃墟×イベントも面白いですね。廃墟遊園地で「体験型ゾンビイベント|オフィスオブザデッド〜屍!ゾンビ商事株式会社〜」みたいなゾンビイベントとかめっちゃ面白そう。

正直なところ外国人視点で「夕張でないと味わえない」観光コンテンツは、今回は見つけられませんでした。それよりも日本人向けに「廃墟」と「財政破綻」を活かした観光コンテンツを提供していく。これなら資金もいらず、今あるものを活かせて、バリューのあるコンテンツを作れるのではないでしょうか。

以上、夕張を訪れてみて感じたことをまとめました。ご意見ありましたら問い合わせから伺えれば嬉しいです。

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
売り上げランキング: 1,943

投稿者プロフィール

那須裕介
那須裕介
日本の魅力を世界に伝える開国クリエイター。
インバウンド動画制作、訪日観光動画メディア「じゃぱねすクエスト」更新、一棟貸しの宿じゃぱねす邸を京都高山で運営をしています(簡易宿所許可有)。お問い合わせはこちらから